相模原の事件でショックを受けた介護職の人へ

相模原の事件に怒り、傷つき、それでも容疑者の背景に自分たちの現状を重ねずにはいられなかった介護職の人へ。

あなたの辛さと容疑者の行動に、因果関係はありません。

介護職はたしかに虐待と隣り合わせです。世間では、殴る、罵倒することを「虐待」と呼びますが、そればかりが虐待ではないことを、あなたは知っています。
利用者の尊厳を守るため、自立を支えるため、ときには安心を得てもらうため、なにをするべきか知っています。
けれども、虐待を遥かに遠ざけ、尊厳をぜったいに守るには、現状の介護福祉の環境がとても厳しいことを知っています。
また、仕事のさまざまな場面で、自らを犠牲にしなければいけないことが多いことも知っています。

そのなかで、後ろめたい想いをしたことがあるかもしれません。
そのなかで、間違いを犯したこともあるかもしれません。
利用者や同僚、上司からの理不尽を受けて、だれも守ってくれない孤独を感じたこともあると思います。
あるいは、自分がハンディキャップを得たり、老いたりしたとき、自分を守ってくれる賃金や蓄えのまるでないことに、現状の労働環境を恨んでいるかもしれません。

それでも容疑者の行動とあなたのつらさには何の関係もありません。

容疑者は少なくとも障害者を隣人とは思っていませんでした。
あなたにとってケアする相手とは、障害者でもなんでもなく、あくまでそれぞれの事情を抱えた「利用者」であり、この社会に生きる同様の人々であるはずです。

だからあなたがたとえ現状のつらさから間違いに怯えても、「爆弾を抱えている」と思っていたとしても、ぜったいに容疑者と同じにはなり得ません。間違いを犯したり、燃え尽きてしまったとしても、ぜったいに容疑者と重ねるようなものは持っていません。

ですから、この事件に胸を痛め、怒ることに、尻込みしないでください。